就活生必見!FANUC の選考体験談

世界的に有名な FANUC の就活体験談です。

産業用ロボット開発における技術力の高さや、給与および株価の高さから、広く名を知られていますが、就職活動に関わる情報は断片的であり、ネットではあまり見かけません。

そこで、自身の備忘録も兼ね、会社の基本情報や就活フローをまとめました。

大学生の就職活動や、社会人の転職活動の参考になればと思います。

FANUC の基本情報

事業内容

FANUC は、TOPIX Core30 の日本を代表する電気機器メーカです。

FA 事業、ロボット事業、ロボマシン事業が、会社を支える 3 本の柱となっています。

事業の根幹は、工作機械用の CNC 装置であり、サーボモータとレーザを組み合わせた基本技術による FA 事業が主力です。

また、基本技術を元に、ロボット事業とロボマシン事業が展開されています。

さらに、AI や IoT の連携による、製造業での生産性向上と効率化を目指したプラットフォーム開発など、IoT 事業も展開しています。

FA 事業 CNC、サーボモータ、レーザが主力商品であり、工場の自動化(Factory Automation)を扱う部門
ロボット事業 会社の代名詞である「黄色いロボット」が主力商品であり、大型ロボットやゲンコツロボット、協働ロボットなど、機械、電気・電子、食品・食料で活用される各種ロボットを扱う部門
ロボマシン事業 ロボドリル、ロボショット、ロボカットが主力商品であり、加工成形のための高性能な各種ロボットを扱う部門
IoT 事業 製造設備やデータの一元管理やデータ共有、異常検知を行うシステムが主力商品であり、生産性向上のための AI/IoT を扱う部門

強み

FANUC の強みは、競争力、利益率、無借金経営の 3 つです。

まず、世界規模の高いシェアを誇る製品が多く、国内外のあらゆる工場で利用されています。

特に、CNC 装置は、世界シェア 50%、国内シェア 70% を占めています。

サービス拠点も、北京、上海、インドなどのアジア、デトロイトやシカゴなどのアメリカ、そしてヨーロッパの各所にあり、製造、販売、メンテナンスを行っています。

広い範囲に進出することで、高い利益を確保できるほか、ある地域経済が崩れた場合に、他のエリアで収益を維持することもできます。

2 つ目の強みは、高い営業利益率です。

一般的に、事業が好調であると評価される営業利益率の水準値は 11% 以上ですが、コロナ渦による経済低迷の 2020 年度においても、FANUC は 14% を保っています。

2007 年度のピーク時には、40% 以上ありました。

3 つ目の強みは、無借金経営であることです。

一般的に、会社経営にあたり、銀行からの借入金や社債などの借金により自己資金を補いますが、FANUC の有利子負債は設立当時からゼロです。

そのため、Net Cash による順位、つまり「金持ち企業ランキング」にて、2021 年には、3700 社以上の上場企業のうち、8 位にランクインしています。

Net Cash とは、企業の手元流動性(現預金 + 有価証券)から有利子負債を差し引いた金額であり、金余りの度合いを示しています。

キャッシュを内部に抱えることで、業績悪化による倒産リスクを軽減することができます。

弱み

FANUC の弱みは、事業範囲が比較的狭く、大打撃を受けた場合の再建が難しいことです。

特に、昨今の世界的な景気低迷による影響が顕著です。

これまで、工場の自動化や、それに伴う産業用ロボットの需要は高く、FANUC 製品の受注が拡大し続けていました。

しかし、コロナ禍の影響で国内外、特に中国にける設備投資が止まり、業績不振に陥っていました。

とは言え、産業用ロボットの需要やメンテナンスニーズは依然として高く、景気回復に伴い、業績回復が見込まれています。

平均年収

2022 年時点の平均年収は、1364 万円です。

電気機器業界では、キーエンスに次ぎ、第 2 位です。

コロナによるパンデミック直後は減給したものの、景気回復の兆しが見え、平均年収は上昇傾向となっています。

2021 年の初任給は、学部卒で約 26 万円、大学院卒で約 27 万円と公表されています。

入社数年後の 25 ~ 29 歳の平均年収は、700 万円後半以上に達すると言われています。

実際、cham の友人で、同社 4 年目の社員に、2021 年の年収を聞いたところ、約 810 万円でした。

中途採用も積極的に行っており、条件により、初めから 800 万円を超えるとのことでした。

勤務地

本社は山梨県の忍野村です。

主要な研究開発の拠点であり、数々の施設が立ち並んでいます。

富士山の麓の広さ 54 万坪に渡る森の中にあり、東京から車で約 2 時間かかります。

ちなみに、忍野村には世界的に有名な「忍野八海」と呼ばれる神秘的な池があり、各国から観光客が集まる場所でもあります。

本社も含め、事業所は下記の通りです。

本社、研究所、工場 山梨県忍野村
壬生工場 栃木県壬生町
筑波工場 茨城県筑西市
隼人工場 鹿児島県隼人町
支社 日野、長野
支店 北海道、東北、越後、前橋、筑波、白山、大阪、中国、広島、九州
海外 アメリカ、ルクセンブルク、中国、韓国、台湾、インド、他

職種と専攻対応表

主に 3 つの職種があります。

研究開発 ・クライアントからの要望を元に商品の開発や設計、商品を用いたテスト加工を行う
・展示会への出展などを行う
生産技術 自社工場の自動化や安全性・生産性の向上に向け、設備の設計や導入・立ち上げを行う
セールス 国内外のクライアント先へ訪問し、ニーズの把握や自社研究所への橋渡し、見積作成、納期管理を行う

職種に対して募集している大学の専攻は下表の通りです。

職種 商品 機械系 電気電子系 情報系 材料系 物理系 その他
研究開発 CNC ハード
CNC ソフト
サーボモータ
サーボアンプ
レーザ発振器
ロボット機構設計
ロボットソフト
ロボマシン
生産技術
セールス

体験談

cham は、最終面接まで進みました。

しかし、並行して就活を進めていた現在の会社から採用されたため、最終面接は辞退させていただきました。

最終面接に参加していた場合、最終面接までの選考や人事とのメールの感触的に、おそらく採用いただけたかと思われます。

選考フローと cham の活動

cham が就活を行った年度の体験ベースで、FANUC の就職活動について解説します。

インターンシップ(8月~ 9月)

夏季または冬季に本社にてインターンシップが開催されます。

cham が参加した当時の場合、本社の忍野村にて、2 日間(8:30 ~ 17:45)に渡り、下記内容で実施されていました。

  • 会社説明
  • 最新自動化工場の見学
  • 社員との対談
  • 「未来のロボットを考える」をテーマとしたグループディスカッション

cham は、9/12 開催の回に参加しました。

まず、会社説明や工場見学にて、数々のロボットや研究施設、精密加工のサンプル等を目の当たりにすることで、技術力の高さに驚き、圧倒されました。

また、社員との対談は、一緒に昼食を取りながら行われました。

ネットでは収集できない、最前線で活躍するエンジニアだから分かる生の声を聴くことができます。

さらに、グループディスカッションは、十分な時間をかけ、同社の技術を活かした新しいロボットを検討し、発表します。

同社のモットーである「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」に基づき提案します。

その他、社員寮に泊まり込みで実施されましたが、寮はとても広く、設備は整っており、とても快適に過ごすことができました。

昼食も無料で提供されましたが、品数は多いうえ、味も美味しく、充実していました。

ちなみに、参加賞として黄色い「FANUC ボールペン」と「FANUC キャップ」をいただけます。

後者の帽子は、工場見学の際に被ります。

MEMO

近年は、オンライン開催が基本のようです。

事前に会社案内ビデオやオンライン工場案内を視聴し、当日は社員による研究内容の説明や、技術者への質問会があるようです。

情報収集(11月~ 2月)

同じ学科の 1 つ上の先輩で、同社から内定を得ていた方が 3 人いました。

その 3 人それぞれから、面接当日の流れや形式、雰囲気、質問事項と回答などを聞き、面接対策をするうえで必要な情報を集めました。

また、大学 OB の現役社員(リクルータ)が大学を訪問した際には、同社が欲しい人材や人物像、会社の内情や給与など、最前線にいる社員だからこそ知るざっくばらんな話をしていただきました。

エントリー(3月)

他社と同様に、リクナビ等の就活アプリを通じ、エントリーし、マイページ登録を行いました。

マイページにて、人事から就活情報が展開されますので、定期的にチェックしました。

緊急性が伴う問い合わせを行う際は、人事に直接メールしました。

エントリーシート提出(3月)

マイページにて、ブラウザ上のフォームに回答を記載する形式のエントリーシートを提出します。

例年、300 文字以下の質問に対し、Web 上で記入し送信します。

cham が就活を行った年度の場合、質問事項は下記 3 点でした。

  • 学校で勉強または研究していることを具体的に教えて下さい。(300 文字以下)
  • 勉強または研究以外で、これまでに打ち込んできたことを具体的に教えて下さい。(300 文字以下)
  • あなたは、周囲の人からどのような人物だと言われますか?また、なぜそう言われるのか、ご自身の考えを教えて下さい。(300 文字以下)

エントリー時の cham の回答を紹介します。

あくまでも参考程度に留めてください。

学校で勉強または研究していることを具体的に教えて下さい。(300 文字以下)

情報技術に関わる様々な専門科目を学習しています。

画像処理や組込み制御をはじめ、ソフトウェア開発のためのプログラミング学習(C/C++/Java/Python)やアルゴリズムとデータ構造、ソフトウェア工学について学んでいます。

現在までに3DCGアプリケーションやタイピングゲーム、機械学習によるライントレーサロボットなどを開発しました。

直近では、ある企業が課題解決に公募してた Web システムのチーム開発を行いました。

研究は、画像処理と深層学習を用いた医学部との共同研究を行っています。

放射線治療における癌患者の医療画像から、呼吸に伴う腫瘍の軌道変化の高精度推定を行うシステムを開発しています。


勉強または研究以外で、これまでに打ち込んできたことを具体的に教えて下さい。(300 文字以下)

Web 開発に打ち込んできました。

サイト管理システムの WordPress とスクリプト言語(HTML/CSS/PHP)を学びながら、サイト制作を行っています。

大学 1 年時にプログラミングや情報技術の忘備録サイトを制作し、今日まで管理を続けています。

現在の月間訪問者数は約 2 万人で、5 つの記事が特定のキーワードで検索上位 10 位以内にヒットします。

また、知り合いのお店の HP とブログを制作し、管理しています。

基本的な実装に加え、訪問者解析ツールの Google アナリティクスを導入し、

お客様のニーズを分析することでブログの書き方やイベント情報の伝え方などをアドバイスさせていただいています。


あなたは、周囲の人からどのような人物だと言われますか?また、なぜそう言われるのか、ご自身の考えを教えて下さい。(300 文字以下)

周囲の人からは目標達成に向けた集中力と情熱がある人物だと言われます。

周囲の人がそう言う理由は、大学の課題や開発に対する私の取り組み方にあると考えます。

例えば Web システムのチーム開発ではチームリーダとして最優秀作品賞を目標に活動しました。

私は書店や図書館をめぐり、新たな知識や技術を短期的に学び、チーム勉強会を開催して共有しました。

また、問題解決のために計算機室に徹夜したり海外エンジニアとチャットしたりするなど、目標達成のためにあらゆる手段を講じました。

その結果、全 12 チームの中から、企業と学生の投票により最優秀作品賞に選ばれました。

こうした私の姿勢が周りの人の評価につながったのだと考えています。

工場見学(3月~ 4月)

エントリーシートを通過すると、工場見学に招待されます。

ただし、夏季または冬季のインターンシップに参加した場合、工場見学はスキップされます。

cham の場合、9 月のインターンシップに参加したため、この過程はスキップされました。

ちなみに、内定した先輩や、現役社員の情報によると、インターンシップや工場見学にて、勤務地の田舎さを目の当たりにし、脱落する就活生が多いそうです。

平均年収が圧倒的に高いにも関わらず、勤務地がある意味僻地であることから志望度が低下し、予想よりも倍率は高くないため、その意味でも狙い目な企業だと思います。

応募書類提出(3月~ 4月)

下記の書類を用意し、郵送にて提出します。

  • 履歴書(写真添付)
  • 成績証明書
  • 卒業証明書(学部生の場合は「卒業見込証明書」)
  • 修了見込証明書(大学院生の場合)
  • 健康診断書

書類一式を郵送後、書類選考が行われ、通過すると、ジョブマッチングに招待されます。

cham の場合、3/22 に書類一式を発送し、7 日後の 3/29 日に人事から書類選考通過の連絡をいただき、ジョブマッチングに招待されました。

参考までに、内定を獲得した大学の先輩や、ジョブマッチング当日に仲良くなった就活生も、同じく 1 週間以内に書類選考の連絡を受けていました。

MEMO

履歴書は、各大学の生協等で提供されるフォーマットを用いて作成すれば良いです。

各種証明書は、キャンパス内の自動発行機や、事務窓口、大学 HP の郵送申請などで取得します。

健康診断書も大学の保健センタ等で取得します。

証明書は発行に時間がかかる場合もあるため、余裕を持って入手することを推奨します。

ジョブマッチング(3月~ 4月)

ジョブマッチングとは、就活生のスキルや性格が会社に合っているかを判断する適性検査であり、実質的には 1 次面接です。

マイページから都合の良い日程を指定して予約しました。

先着順で枠が埋まっていくため、早めにスケジュールを調整し、予約することをオススメします。

cham は、なかなか予約枠を確保できず、4/12 になってしまいました。

cham が就活を行った年度におけるジョブマッチングの 1 日の流れは下記の通りです。

11:30 集合後 & バス移動 「富士山山中湖(ホテルマウント富士入口)」バス停に集合
11:45 書類記入 ・個人情報や希望職種、並行して就活を進めている企業などを記入する自己紹介シートを作成
・記入欄は小さいため、履歴書のアピールポイントを要約した文章の用意を推奨
・面接時に話のタネとして利用されるため注意
12:30 昼食 インターンシップ時とは異なる小さな社員食堂にて昼食
13:30 ジョブマッチング ・1 枠あたり十数人程度の就活生が参加
・数人ずつのグループに分けられ、グループごとに面接官が割り当てられ、1 人ずつ順番に面接
16:00 解散 グループごとに手配されたタクシーにて集合場所まで移動し、各自帰宅

また、ジョブマッチングの実施内容は、下表の通りです。

面接時間 約 25 分
面接形式 ・面接官 : 就活生 = 3 : 1
・面接官は幹部クラスのエンジニア 3 名
雰囲気 ・やや圧迫な印象
・面接官は砕けた口調であり、形式ばらず、自然な会話を通じ、様々な質問が行われる
・頭の後ろで腕を組んで聞いていたり、携帯電話が鳴ったりするシーンもあった
主な質問事項 ・志望理由
・大学で習得した専門知識やスキルは何か?
・大学の研究内容は何か?
・会社の事業内容や製品を知っているか?
・配属希望の事業部門と理由
・最終選考に進んでいる他社の内定が出たらどうするか?

cham のジョブマッチングの結果ですが、次の日の 4/13 にジョブマッチング「成立」の連絡が来て、最終選考(役員面接)の案内をいただきました。

MEMO

グループ全員の面接が完了するまで、全就活生が同じ部屋に待機しましたが、緊張感漂う空間であり、待ち時間が苦痛でした。

ただ、帰りのタクシーでは、就活生同士仲良くなり、大学の話や就活の話で盛り上がり、仲良くなりました。

その中の 1 人は、同社に入社しており、今も連絡を取り合う仲です。

役員面接(6月上旬)

代表取締役社長をはじめとする役員 4 ~ 6 名と、就活生 1 名の最終選考です。

先輩の話によると、改めて、志望動機や成績について質問されるが、入社意志の確認がメインであり、和やかな雰囲気で選考が行われるとのことでした。

役員面接の時点でほぼ内定が決まっているとのことです。

ただし、注意点があります。

FANUC は推薦応募のみで、自由応募はなく、学校推薦書を用意し、役員面談時に提出する必要があります。

一般的に、学校推薦を用いた選考の内定率は高い傾向にありますが、確実に内定をいただけるとは限りません。

また、学校推薦を提出した場合、基本的には内定を辞退することはできません。

そのため、cham は苦渋の決断の末、FANUC の役員面談より先に内定通知が来た現在の会社に承諾し、最終選考を辞退させていただきました。

最終結果通知(6月上旬)

先輩の話によると、内定者は、役員面談から数日以内に採用通知をいただけるとのことでした。

ただし、経過日数には個人差があるため、注意が必要です。

以上が、選考フローと cham の活動内容です。

就職・転職にオススメ

FANUC への就職・転職は、かなりオススメです。

既述の通り、FANUC の CNC は、世界中の工作機械に搭載されており、各種ロボットも主要国の産業で活躍しています。

世界に誇る高い技術を学びながら、グローバルに展開する同社の研究開発に貢献し、仕事を通じて世界に大きなインパクトを与えることができます。

また、平均年収が圧倒的に高いにも関わらず、勤務地が田舎であることから志望度が低下し、競争率はそれほど高くないため、狙い目な企業だと思います。

しかも、田舎とは言え、会社のすぐ近くに高速道路があり、東京まで 1、2 時間で遊びに行くこともできます。

cham は、学部 1 年時から、FANUC への新卒入社を希望していました。

現在、転職も検討していますが、同社も候補です。